東日本大震災は、鉄道を長期に不通にし、集約型都市構造の形成を目指した仙台の都市活動を混乱させた。当研究所では、これまでの仙台での都市交通政策に関わる業務実績とデータ蓄積を活かし、震災に伴う交通行動と意識の変化、また、生活機能が比較的充実している市街地と自動車依存が高い郊外部との比較分析を行った。
　本発表では、集約型都市構造への転換を計画している全国の地域に対して、分析結果から明らかになった災害に強い集約型都市構造に向けた都市交通政策に関わる知見を紹介した。

　パーソントリップ調査（PT調査）は、人々の一日の動きを調査するものである。PT調査データをある時刻において集計した滞留人口と移動人口という考え方を用いると、いつ、どこに、どのような人たちが、どのような目的で、どのような交通手段で、どれくらいいるのかを把握し、都市を読むことができる。
　本発表は、東京都市圏交通計画協議会が実施した東京都市圏パーソントリップ調査データを用いて、東京駅周辺の商業地分析に活用した例、帰宅困難者対策などの防災対策に活用した例を紹介した。

　東日本大震災以降、交通基盤の代替性・多重性の重要性が再認識されている。本発表では、①大規模災害を想定した複数の交通手段を対象とした広域交通基盤の代替性・多重性、②異常気象（大雨等）時の地域の安全・安心の観点からの地域の道路基盤の代替性・多重性を題材とし、「所要時間」データを用いた評価指標の考え方、試算結果について概説した。

　我が国経済は現在、デフレ不況にあり、かつ、東日本大震災からの復興は道半ばである。
　本発表は、デフレ脱却と震災復興に求められる公共投資の役割について、最近の経済学的議論を参考にマクロ計量経済分析に基づき考察したものである。

　わが国は人口減少期に入り、都市部においても人口減少・高齢化が進むものと想定されている。従来より都市計画では人口フレーム方式により人口集中地区（ＤＩＤ）を目安として市街化区域を設定し、優先的に市街化を進め、秩序ある市街地整備に取り組まれてきた。
　本発表は、今後の人口減少期における市街地のあり方について、とりわけ集中的に基盤整備等が進められてきた大都市圏に注目して、①メッシュデータを用いた将来人口・非ＤＩＤ化メッシュの推計、②市街地縮退検討のための地域評価手法の開発、③これまでの市街地縮退の事例整理、④今後の市街地形成・土地利用のあり方、について検討した内容を報告した。

　自治体の厳しい財政状況や長期にわたる建築制限に対する訴訟などを背景に、都市計画道路の見直しが全国的に進められている。見直しの多くは、個々の路線が必要かどうかの検証にとどまっているが、本来的には、都市のコンパクト化等の考え方にもとづいて、都市計画道路網を再構築する視点が重要である。
　本発表では、さいたま市における都市計画道路の見直しの先進的な事例をもとに、都市の持続可能性の観点から都市計画道路を再構築するための考え方について紹介した。