データサイエンス室は、当研究所が設立以来取り組んできたデータ解析技術をより進化させ、多様化・複雑化する社会課題を解決するための調査・研究を推進することを目的として、2020年4月に設立されました。
社会で進むデータの時代を背景として、当研究所が携わる都市や交通、環境等の分野においても、データ解析の高度化や新たな政策評価への対応が求められています。
データサイエンス室では、ネットワーク解析、GIS、データベース等の情報処理技術に基づき、都市地域・環境部門および交通・社会経済部門と連携を図りながら、ビッグデータを活用した交通解析、交通行動モデルや利用者均衡配分をはじめとした交通量推計手法の開発・適用、交通実態調査等に係るデータ解析やシステム開発に取り組むとともに、データサイエンスに係る新技術の研究・開発や当研究所全体の技術向上を図る役割を担っています。
データの時代を背景とした自動車・自転車・歩行者等の移動軌跡に係るビッグデータ解析や可視化、多様化した人や自動車の行動原理を表現する数理モデル、これらの基礎となる質の高い交通実態データ等を取得するための統計調査等について、最新技術を取り入れながら、研究・開発に取り組んでいます。
ICTの進展により、多種多様で膨大な交通データの活用が可能になっています。プローブカーやETC2.0などの走行車両の観測データ、自転車の移動軌跡データ、プローブパーソンデータおよび携帯電話やGPSの位置情報データ、MaaSの実装による検索履歴や行動履歴データ等を活用し、交通状況の把握や交通行動の解析を行うためのデータ処理技術を開発しています。
全国レベルの交通需要推計モデルや都市圏の交通計画検討で用いる交通行動モデル、施策実施効果を予測するための中心市街地における人の回遊行動モデルや自動車・歩行者のミクロシミュレーション、MaaSや自動運転の評価等、様々な数理的モデルの研究およびこれらを適用したシステムの開発に取り組んでいます。
例えば、生存時間解析モデルを用いて、スマート・プランニングやアクティビティモデルにおいて時間軸を考慮した滞留時間推計の研究・開発を行っています。また、OD逆推定技術を用いて、観測交通量に基づく自動車OD表の推定や歩行者OD表の推定、確率的フロンティアモデルを用いた道路のリンクパフォーマンス関数の推定にも取り組んでいます。
特に、アクティビティモデルをはじめとする交通行動モデルや交通量配分モデルについては、最新の技術動向やニーズを取り込み、システムの改良を重ねています。
パーソントリップ調査、物資流動調査、全国道路・街路交通情勢調査自動車起終点調査(道路交通センサスOD調査)など、数多くの大規模交通関係統計調査に携わってきています。これまでの経験・ノウハウを基に、実査支援、マスターデータ整備、集計解析など、交通実態調査に関する一連のデータ処理を実施する汎用性の高いシステム群を構築し、調査データの正確性の担保と調査の効率化・高度化を推進しています。
現在及びこれまでに次のようなシステムを開発してきました。今後とも、MaaSや自動運転の実装によるビッグデータ解析、AIの活用をはじめとする新しい解析技術等の研究・開発を進め、正確かつ効率的な調査・研究及び政策検討や計画立案のニーズを先取りしたシステム開発に取り組んでいきます。