IBS計量計画研究所

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平成27年度IBSフェローシップ発表会

概要

日 時 平成27年7月16日(木)13:30~17:15
会 場 場所: スクワール麹町「全芙蓉」

プログラム

最終発表

ドイツの地方都市における縮退・都市再生(リノベーション)の取り組み

発表者太田 尚孝 氏(福山市立大学都市経営学部都市経営学科 准教授)

太田 尚孝

 わが国は人口減少・高齢化を迎え、近い将来、自然減による計画的な都市の縮退が予想され、昨今の空き地・空き家問題や、行政の厳しい財政状況等を踏まえると、早期より計画的な縮退に取り組むことが必要となりつつあります。産業構造転換等による社会減を経験しているドイツ、特に旧東独においては、縮退による生業・産業も含めた都市再生(リノベーション)に取り組んでおり、学ぶべき事項が多いと考えられます。本研究は、わが国の来るべき都市の縮退時代に備え、ドイツ地方都市における縮退・都市再生の取り組みを、住宅・産業・中心市街地等の多様な視点から総括し、わが国の今後の都市・地域づくりへの示唆をとりまとめるものです。
 2015年度フェローシップでは、研究最終年として、ドイツNRW州政府が開始した都市再生プログラム「REGIONALE」についての実態把握と、調査を通じての我が国への示唆や今後の地方創生戦略について報告されました。

英国(イングランド)における道路維持管理の実態と特徴~品質管理・資金調達・契約を中心に~

発表者大西 正光 氏(京都大学大学院 工学研究科 都市社会工学専攻 助教)

大西 正光

 英国(イングランド)においては、2010年5月の総選挙で、13年ぶりに労働党から保守党・自民党連立政権へ政権交代があり、道路分野において道路庁の予算が減らされたのを始め、交通省の新たな業務計画の公表や、個別の道路計画の延期を含めた見直しなど、さまざまな政策の変化が進行中です。一方で、道路維持管理に関しては、5年間を基本とした契約で民間会社への外注等を実施し、数年をかけてより品質管理に重点を置いた契約へと順次変更されています。また、道路の大規模改築とその後の長期の維持管理及び必要な資金調達を合わせて契約するなどPFI/PPP等を活用した道路インフラの維持管理を行っています。
 本研究では、英国での道路維持管理の実態と特徴を品質管理・資金調達・契約の視点から調査するとともに、今後の我が国における道路維持管理への示唆をとりまとめます。
 2015年度フェローシップでは、研究最終年として、道路庁(Highways Agency)の公営企業化およびHE(新公営企業)の調達戦略・アセットマネジメント戦略に関して、その目的や評価の考察等が報告されました。

中間発表

英国におけるアクティブトラフィックマネジメント

発表者塩見 康博 氏(立命館大学理工学部環境システム工学科 准教授)

塩見 康博

 道路交通の適切な運用を達成するための道路交通マネジメントの1つに、動的交通管理(Active Traffic Management、ATM)があります。交通現況に応じて、リアルタイムおよび予測情報に基づく交通運用戦略を組み合わせ、交通需要管理するもので、英国では全土へ拡大し、米国でも様々な地域で導入が始まるなど、よりスマートな交通管理が実施されています。なかでも英国においては、道路庁により渋滞緩和・安全性向上のため、M42をはじめとしたATMのパイロット事業が進められてきました。我が国でも既存道路ストックの有効活用の視点から、高速道路を中心に様々な対策を試みていますが、明らかな渋滞解消・事故削減には至っていません。
 本研究では、英国で取り組まれているトラフィックマネジメントに着目し、理論的な背景、法制度上の課題を克服した知見、導入効果及び導入意義、ドライバーの反応などを調査し、我が国への示唆をとりまとめます。
 2015年度フェローシップでは、中間発表として、M42での事業導入の経緯とその効果、英国内におけるATM展開について報告されました。

2012ロンドン・オリンピック、パラリンピック大会の競技場、選手村(等)の跡地活用のあり方

発表者村木 美貴 氏(千葉大学大学院工学研究科 教授)

村木 美貴

 2012年8月に英国政府はLondon 2012 Olympic Legacyを組織し大会の長期的便益と結果について把握し、2013年7月に英国政府とロンドン市が共同で報告書を取りまとめています。
 東京では、2020年に2回目の夏季五輪大会が計画中です。1964年開催時の会場・インフラは今回も一部活用されますが、全体的には新たな大会施設整備を検討中です。大会施設や会場の整備を後世にわたって東京の都市再生に生かしていくため、ロンドン五輪の跡地活用の現在を調査することが意義あると考えられます。
 本研究は、ロンドンの事例調査により2020年東京開催のための有益な情報としてとりまとめ、五輪開催が東京の長期的な都市再生に有意義であることを示すものです。また東ロンドン地域の再生との関連を考慮しつつ、五輪公園を中心とした大会会場跡地の活用について都市・地域計画(Spatial Planning)の立場から必要事項を調査します。
 2015年度フェローシップでは、中間報告として、オリンピック後のレガシー計画の特徴や計画許可手続き、および計画地域での付加価値について報告されました。

初年度発表

環境首都ストックホルムの持続可能な都市の取り組み

発表者福田 大輔 氏(東京工業大学大学院理工学研究科 土木工学専攻 准教授)

福田 大輔

 ストックホルムは、EUグリーンキャピタル制度の初代環境首都選出(2010年)に伴い、2050年に化石燃料使用量ゼロを目指すfossil fuel free cityに取組中です。自転車インフラの整備、自転車道の冬期維持管理、バイクシェアリング、情報提供等の自転車施策に積極的に取り組み、10年間で自転車利用者が8割増加しています。サステイナブルなまちを目指しているハンマルビーショースタッド地区は、五輪招致の際の選手村候補地でもあり、自然エネルギーと廃棄物の徹底利用、住民の8割が公共交通・自転車・徒歩での通勤を目指しています。さらに、石油やガスタンク基地を移転させた沿岸地域の都市開発であるロイヤル・シーポートは、化石燃料使用量ゼロを前倒しにより2030年での実現を計画し、エネルギー消費量全体の30%を自給自足する世界一のスマートシティを目指しています。
 本研究では、このようなストックホルムにおける環境都市として具体的な取り組み(計画・プログラム、財源、組織等)について、情報収集と整理を行うとともに、我が国における都市・交通政策への適用可能性と課題を明確にします。
 2015年度フェローシップでは、ストックホルムの現況や、調査内容・方針、スケジュール等が報告されました。

バンコクの軌道系公共交通機関沿線における土地開発の実態

発表者福田 敦 氏(日本大学理工学部社会交通工学科 教授)

福田 敦

 タイの首都バンコクでは、自動車交通増加により発生する交通問題への抜本的対応のため、2029年までに約508kmに及ぶ軌道系公共交通機関整備を計画しています。しかし、軌道系公共交通機関と連動した沿線開発のための制度的枠組みが弱く、近年整備されたエアポートリンクレールや来年開業予定のパープルラインの沿線において無秩序な土地開発が行われており、公共交通利用転換が進まない大きな原因となっています。
 本研究では、近年の政治情勢等も踏まえ、タイにおける軌道系公共交通機関および都市計画に関連する行政機関、事業主体を対象に、軌道系公共交通機関と沿線開発に関連する制度的な枠組み(土地制度等)を調査し、わが国における沿線開発の手法と比較することでその課題を明らかにします。加えて、エアポートリンクレールおよびパープルライン沿線における住宅地の開発実態と居住者の交通実態を把握し、軌道系公共交通機関と沿線開発を連携した場合に想定される効果について分析するものです。
 2015年度フェローシップでは、調査対象地域の概況、研究内容、スケジュール等が報告されました。

※ 都市計画CPDプログラム認定
  土木学会継続教育(CPD)プログラム認定

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