IBS計量計画研究所

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平成25年度IBSフェローシップ発表会

概要

日 時 平成25年8月26日(月)14:50~17:30
会 場 アルカディア市ヶ谷(私学会館)「富士(西)」

プログラム

最終発表

英国におけるアーバンビレッジの実態と課題

発表者野嶋 慎二 氏(福井大学工学部建築建設工学科 教授)

野嶋 慎二

 第二次世界大戦後、英国は住宅不足が深刻化し、郊外部に大量な住宅開発を行ったが、それは画一的で、安く質の悪い住宅であった。80年代には、産業構造の変化や不況による社会問題も相まって、荒廃による生活環境の悪化やコミュニティ問題も深刻化した。90年代以降、英国の景気は回復し、新しい都市理論やデザインに基づいた開発が次々と行われ、英国の都市や住宅地は大きな変貌を遂げていく。
 その大きな転換の契機をつくったのは、1990年代の初頭にチャールズ皇太子によって提唱されたアーバンビレッジ運動であった。1997 年には、国の計画行政指針にもアーバンビレッジの考え方が組み込まれるなど、英国の都市づくりに大きな影響を与えてきた。本研究は、アーバンビレッジ運動の経緯やその概念が生まれた背景、その概念がどのような形で実現化し、まちづくりの方法としてどのように現れたかを、文献調査、各事例の開発担当者へのヒアリング及び踏査に基づいて、明らかにしたものである。
 2013年度フェローシップ発表会では、研究の最終年として、研究全体の報告に併せて、我が国の都市再生において、アーバンビレッジから学ぶことが報告された。

中間発表

低速交通によるモビリティデザイン ~高齢社会を支える街路空間再配分~

発表者村上 迅 氏(香港城市大学土木・建築工程系 Assistant Professor)

村上 迅

 米国では、ネイバーフッド・エレクトリック・ビークル(NEV)を前提とした交通まちづくりが進められている先進都市が多数あり(例えば、フロリダ・セレブレーション市やカリフォルニア・リンカーン市等)、高齢社会に対応した移動支援がまちづくりと一体となり進められている。既に全世界で約48万台(2011年時点)の市場があり、今後さらに普及していくことが見込まれている。特に、カリフォルニア州リンカーン市はNEV交通計画賞を受賞した都市であり、NEV中心のまちづくりが進められている。本研究では、リンカーン市を含むNEV導入都市を対象とし、NEV交通計画のコンセプト(計画のねらい、計画の特徴や位置付け)、街路や駐車場における道路構造や交通規制の現状と課題を調査し、我が国への導入上の課題を明らかにするものである。
 2013年度フェローシップ発表会では、研究の中間年として、文献調査、インタビュー調査に基づくリンカーン市を中心としたNEVの街路空間設計を含めた整備計画、整備制度、導入にあたっての課題、今後の研究計画が報告された。

ミュンヘン環状道路地下化 ~Mittlerer Ringと都市の再構築~

発表者伊藤 雅 氏(広島工業大学工学部都市デザイン工学科 准教授)

伊藤 雅

 中心市街地を通過する環状道路やバイパスを地下化し、都心を復権する動きが80年代後半から欧州や米国で活発化している。ドイツミュンヘンでは、中環状道路(Mittlerer Ring:連邦道路2R)を地下化した大規模な都市の再構築が1980年代から段階的に進められ、地上部を生活道路や公園に再編している。96年6月にはミュンヘン初の3箇所のトンネル地下化に関する住民投票が行われ、ペツェールリング゙(Petuelring)等の地下化が完成している。本研究では、環状道路地下化建設後の地上部に着目し、沿道土地利用の改変の状況や土地活用の実態、生活環境や市街地整備に及ぼした効果を調査し、我が国の都市再生への示唆を考察するものである。
 2013年度フェローシップ発表会では、研究の中間年として、ミュンヘン環状道路Mittlerer Ringの概要、ドイツにおける街路空間の再構成事例、ミュンヘン環状道路沿道の地価分析、今後の研究計画が報告された。

初年度発表

ドイツの地方都市における縮退・都市再生(リノベーション)の取り組み

発表者太田 尚孝 氏(筑波大学システム情報系社会工学域 助教)

太田 尚孝

 わが国は人口減少・高齢化を迎え、近い将来、自然減による計画的な都市の縮退が求められる。また、昨今の空き地・空き家問題や、行政の厳しい財政状況等を踏まえると、早期より計画的な縮退に取り組むことが必要となりつつある。産業構造の転換等による社会減を経験しているドイツ(特に旧東独)においては、ライプチヒやライネフェルデ等、縮退による都市のリノベーション(生業・産業も含めた都市再生)に取り組んでおり、学ぶべき事項が多いと考えられる。本研究は、わが国の来るべき都市の縮退時代に備え、ドイツの地方都市における縮退・都市再生(リノベーション)の取り組みを、住宅・産業・中心市街地等の多様な視点から総括し、わが国の今後の都市・地域づくりへの示唆をとりまとめるものである。
 2013年度フェローシップ発表会では、今後の研究を行うにあたっての研究方針、スケジュールが報告された。

英国(イングランド)における道路維持管理の実態と特徴~品質管理・資金調達・契約を中心に~

発表者大西 正光 氏(京都大学大学院工学研究科都市社会工学専攻 助教)

大西 正光

 英国(イングランド)においては、2010 年5月の総選挙で、13年ぶりに労働党から保守党・自民党連立政権へ政権交代があり、道路分野において道路庁の予算が減らされたのを始め、交通省の新たな業務計画の公表や、個別の道路計画の延期を含めた見直しなど、さまざまな政策の変化が進行しつつある。一方で、道路維持管理に関しては、5年間を基本とした契約で民間会社への外注等を実施し、数年をかけてより品質管理に重点を置いた契約へと順次変更されている。また、道路の大規模改築とその後の長期の維持管理及び必要な資金調達を合わせて契約するなどPFI/PPP等を活用した道路インフラの維持管理を行いつつある。 本研究では、英国における道路維持管理の実態と特徴を品質管理・資金調達・契約の視点から調査するとともに、今後の我が国における道路維持管理への示唆をとりまとめる。
 2013年度フェローシップ発表会では、今後の研究を行うにあたっての研究方針、スケジュールが報告された。

※ 都市計画CPDプログラム認定
  土木学会継続教育(CPD)プログラム認定

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