IBS計量計画研究所

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平成30年度IBSフェローシップ発表会

概要

日 時 平成30年7月20日(金)13:30~17:35
会 場 アルカディア市ヶ谷「富士(西)」

プログラム

最終発表

米国におけるコンプリート・ストリートに関する取り組みの実態と課題

発表者トロンコソ パラディ ジアンカルロス 氏(東京大学大学院 工学系研究科都市工学専攻 助教)

トロンコソ パラディ ジアンカルロス

 本研究では、米国の国、州、都市、民間団体等のそれぞれにおいて、歩行者や自転車のための道路空間活用が進むこととなった背景や動機等を明らかにするとともに、米国の複数の大都市における道路空間の再編事例に関する情報を収集し、制度体系、予算措置、具体的な空間活用方策、道路ネットワーク計画と個別の空間再編との関係性、空間再編の効果、今後に向けた課題などを明らかにし、今後の我が国における道路空間の再編への示唆をとりまとめることを目的としています。
 平成30年度IBSフェローシップ発表会では、最終報告として、Littleton、Seattle, Fort Lauderdale, およびNashvilleの4自治体の事例の紹介を通じ、日本への示唆として柔軟かつ各都市の文脈に応じた街路空間に対しての考え方を挙げ、道路占用制度の緩和に伴う路上空間の活用においては既存マニュアルの参照に留まらない、日本の環境に応じた望ましい街路空間を描くための試行錯誤への期待が報告されました。

フィリピンのマニラ大都市圏における道路・鉄道整備・計画の展開

発表者室町 泰徳 氏(東京工業大学 環境・社会理工学院 土木・環境工学系 准教授)

室町 泰徳

 フィリピンのマニラ大都市圏では、人口や経済の成長に伴う宅地開発が旺盛で、インフラ整備が行われてきましたが、交通のインフラ整備不足の課題解決は難しい状況でした。2013年には、マニラ首都圏のインフラ整備と交通計画をセクター横断的な視点で整理し、2030年の交通ネットワーク「ドリームプラン」が策定されています。
 本研究では、これらの計画内容及び現在の取り組み状況を調査・整理するとともに、これらが一体的整備か別々に行われているのかを調査し、一体的整備ならばどのような制度を活用しているのか、道路・鉄道のケースそれぞれについて検証することを目的としています。
 平成30年度IBSフェローシップ発表会では、ドリームプランの概要と現況のレビューおよびステークホルダーへのインタビュー調査結果の報告があり、用地取得や大統領の任期等の課題はあってもドリームプランが人々に大歓迎され、現政権によって進められていること、TODの実施手段には宅鉄法と共に、民間デベロッパーとの交渉や交通インパクト評価の活用等が考えられることなどが最終報告として発表されました。

中間発表

ヨーロッパにおける大型貨物車を利用した貨物輸送に関する取組の実態と課題

発表者渡部 大輔 氏(東京海洋大学 学術研究院 流通情報工学部門 准教授)

渡部 大輔

 近年、欧州では、大型貨物車を利用した貨物輸送の省人化・効率化に向けた取組が行われています。例えばドイツでは、ダブル連結トラックの社会実験が行われており、本格実施に向けた検討が進められています。また、トラックの隊列走行に関しても、オランダ主導でプロジェクトが実施されるなど、大規模な公道実証実験が実施・予定されています。こうしたなか、我が国においても、トラック輸送の省人化等を目的にして、ダブル連結トラックによる特車通行許可基準(車両長)を緩和する社会実験が国土交通省で行われているところです。
 本研究では、我が国におけるダブル連結トラックや隊列走行等の導入を念頭において、欧州における先行事例について現在の検討状況、本格実施に向けた課題、その課題をクリアするための工夫、これらの大型貨物車の利用が想定される顧客や社会経済効果の見込みを調査します。更には、トラックの車両技術や大型貨物車に対応したインフラ整備の動向等を調査して、今後の我が国における物流施策に対する示唆をとりまとめることを目的としています。
 平成30年度IBSフェローシップ発表会では、研究の概要および欧州での実施現況に加え、スウェーデンでの現地調査、日本での事例整理、および今後の研究計画等が報告されました。

ラドバーンの現在と設計思想が米国に与えた影響

発表者神山 藍 氏(東洋大学 理工学部 都市環境デザイン学科 准教授)

神山 藍

 1929年に米国・ニュージャージー州に開発されたラドバーン(Radburn)は、歩車分離を初めて試みた近隣住区のお手本であり、クラレンス・スタインとヘンリー・ライトによって設計されました。ラドバーンはニュージャージー州バーゲン郡フェアローンに位置し、60万m2に人口3,000人、世帯数700世帯弱が暮らし、約90年経過した今も現存し、人気のエリアとなっています。小学校をコミュニティの中心として位置づけ、歩道ネットワークをコミュニティ内に縦横に張り巡らせ、アメニティの高いオープンスペースを多く設け、豊かな生活を実現させるコミュニティとして多くのアイデアと知恵が、この住宅地には盛り込まれています。
 本研究では、今も息づくラドバーンの設計思想が米国社会に与えた影響を考察し、これら長年に渡っての人気の要因を探るとともに、我が国における暮らしの道再生へのヒントを整理し、自動車依存の首都圏郊外部の近隣住区再生への示唆をとりまとめることを目的としています。
 平成30年度IBSフェローシップ発表会では、中間報告として、ラドバーンの設計思想の空間的特性としての階層および境界性、ならびにサニーサイド、フォレストヒルズ、ラドバーンの3地域の比較から社会的特性が整理されました。また今後の研究方針についても報告されました。

初年度発表

マドリード市におけるM-30の地下化とそれに伴う都市空間整備に関する考察

発表者小松崎 俊作 氏(東京大学大学院 工学系研究科 講師)

小松崎 俊作

※小松崎先生は在スペインのため、発表の録画を上映。

 このテーマでは、スペイン・マドリード市のM30ハイウェイの地下化プロジェクトに至った経緯に加え、開放された上部空間の計画、その事業内容、実施プロセスを調査するとともに、現在におけるそのプロジェクトの効果・影響を把握し、今後の我が国における高速道路の地下化とそれに伴う都市空間整備に関する示唆をとりまとめることを目的としています。
 平成30年度IBSフェローシップ発表会では、M30とその事業の概要、および研究方法と方針について発表がありました。

メデジン市における都市開発の発展経緯に関する考察

発表者志摩 憲寿 氏(東洋大学国際学部 国際地域学科 准教授)

志摩 憲寿

 メデジン市は、コロンビアの中央に位置する同国第2の大都市であり、長年麻薬犯罪の巣窟として名を馳せていましたが、1990年代初頭以降、都市再興に取組み、急成長した都市です。2013年にはVeronica Rudge Green Awardにおいて、世界で最も優れた都市デザインの都市として選出されました。また都市交通についても、高架通勤電車、ロープウェイ、BRT、支線バスからなる統合的公共交通システムや、自転車シェアリング、LRTの建設等、先進的な取組みが実施されています。
 本テーマでは、当初、麻薬とマフィアによって治安が悪かった状態から、どのような都市計画・都市開発を実行し、現在の優れた都市に発展してきたか、我が国でのこれまでの研究成果を踏まえつつ調査し、我が国における都市開発・都市再生への示唆をとりまとめることを目的としています。
 平成30年度IBSフェローシップ発表会では、メデジン市の概要とその都市計画の推移、市長による諸政策の紹介に続き、研究方法とスケジュールについて発表されました。

※ 都市計画CPDプログラム認定
  土木学会継続教育(CPD)プログラム認定

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