IBS計量計画研究所

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2019年IBSフェローシップ発表会

概要

日 時 2019年7月22日(月) 13:30~17:30
会 場 アルカディア市ヶ谷「富士(西)」

プログラム

最終発表

ヨーロッパにおける大型貨物車を利用した貨物輸送に関する取組の実態と課題

発表者渡部 大輔 氏(東京海洋大学 学術研究院 流通情報工学部門 准教授)

 近年、欧州では、大型貨物車を利用した貨物輸送の省人化・効率化に向けた取組が行われています。ドイツではダブル連結トラックの社会実験が行われており、本格実施に向けた検討が進められ、トラックの隊列走行に関してはオランダ主導でプロジェクトが実施されるなど、大規模な公道実証実験が実施・予定されています。こうしたなか、我が国においても、トラック輸送の省人化等を目的にして、ダブル連結トラックによる特車通行許可基準(車両長)を緩和する社会実験が国土交通省で行われているところです。
 本研究では、我が国におけるダブル連結トラックや隊列走行等の導入を念頭において、欧州における先行事例の検討状況、本格実施に向けた課題、その課題をクリアするための工夫、これらの大型貨物車の利用が想定される顧客や社会経済効果の見込みを調査しました。更には、トラックの車両技術や大型貨物車に対応したインフラ整備の動向等を調査して、今後の我が国における物流施策に対する示唆をとりまとめることを目的としています。
 2019年IBSフェローシップ発表会では、欧州における長大・連結トラックの導入や隊列走行に関する現状に加えて、日本におけるトラック輸送の省人化に対する取り組みの現状が報告されました。

ラドバーンの現在と設計思想が米国に与えた影響

発表者神山 藍 氏(東洋大学 理工学部 都市環境デザイン学科 准教授)

 1929年に米国・ニュージャージー州に開発されたラドバーン(Radburn)は、歩車分離を初めて試みた近隣住区のお手本であり、クラレンス・スタインとヘンリー・ライトによって設計されました。ラドバーンはニュージャージー州バーゲン郡フェアローンに位置し、60万m2に人口3,000人、世帯数700世帯弱が暮らし、約90年経過した今も現存し、人気のエリアとなっています。小学校をコミュニティの中心として位置づけ、歩道ネットワークをコミュニティ内に縦横に張り巡らせ、アメニティの高いオープンスペースを多く設け、豊かな生活を実現させるコミュニティとして多くのアイデアと知恵が、この住宅地には盛り込まれています。
 本研究では、今も息づくラドバーンの設計思想が米国社会に与えた影響を考察し、これら長年に渡っての人気の要因を探るとともに、我が国における暮らしの道再生へのヒントを整理し、自動車依存の首都圏郊外部の近隣住区再生への示唆をとりまとめることを目的としています。
 2019年IBSフェローシップ発表会では、ラドバーンの現在に至るまでの整理、およびラドバーンの設計思想が米国に与えた影響の考察等について発表がありました。

中間発表

マドリード市におけるM-30の地下化とそれに伴う都市空間整備に関する考察

発表者小松崎 俊作 氏(東京大学大学院 工学系研究科 准教授)

 このテーマでは、スペイン・マドリード市のM30ハイウェイの地下化プロジェクトに至った経緯に加え、開放された上部空間の計画、その事業内容、実施プロセスを調査するとともに、現在におけるそのプロジェクトの効果・影響を把握し、今後の我が国における高速道路の地下化とそれに伴う都市空間整備に関する示唆をとりまとめることを目的としています。
 2019年IBSフェローシップ発表会では、M30事業実施プロセスの政治過程分析や事業の社会的影響、および我が国への示唆に関して報告がありました。また最終報告に向けた研究方針も発表されました。

メデジン市における都市開発の発展経緯に関する考察

発表者志摩 憲寿 氏(東洋大学国際学部 国際地域学科 准教授)

 メデジン市は、コロンビアの中央に位置する同国第2の大都市であり、長年麻薬犯罪の巣窟として名を馳せていましたが、1990年代初頭以降、都市再興に取組み、急成長した都市です。2013年にはVeronica Rudge Green Awardにおいて、世界で最も優れた都市デザインの都市として選出されました。また都市交通についても、高架通勤電車、ロープウェイ、BRT、支線バスからなる統合的公共交通システムや、自転車シェアリング、LRTの建設等、先進的な取組みが実施されています。
 本研究では、当初、麻薬とマフィアによって治安が悪かった状態から、どのような都市計画・都市開発を実行し、現在の優れた都市に発展してきたか、我が国でのこれまでの研究成果を踏まえつつ調査し、我が国における都市開発・都市再生への示唆をとりまとめることを目的としています。
 2019年IBSフェローシップ発表会では、コロンビアやメデジンを事例とした国内外の既往文献の整理、およびコロンビアの開発計画・都市計画制度の枠組みとメデジンの都市政策の動向に関する現地調査について報告がありました。

初年度発表

米国におけるStreet Design Guideの影響と効果

発表者三浦 詩乃 氏(横浜国立大学大学院 都市イノベーション研究院 助教)

 米国の68の主要都市と11の公共交通機関から構成されるNACTO(National Association of City Transportation Officials)は、将来の都市が備えるべきモビリティのビジョンを示し、道路の機能分類に応じた新たな視点からの街路構造デザインとして「Urban Street Design Guide」、「Global Street Design Guide」等の複数のガイドラインを出版しています。
 本研究では、これらガイドラインの適用状況や影響、効果などを具体的な事例に基づいて調査を行い、我が国での街路空間への適用に向けた知見をとりまとめます。
 2019年IBSフェローシップ発表会では、本研究の背景・目的およびその方法とスケジュール等について発表がありました。

ハンブルグの都市開発『ハーフェンシティ』における駐車場整備の考え方とその評価

発表者姥浦 道生 氏(東北大学大学院 工学研究科 都市・建築学専攻 准教授)

※姥浦先生は都合により当日来場できなかったため、発表の録画を上映。

 ドイツ・ハンブルグ市の欧州最大の都市開発プロジェクト「ハーフェンシティ」は、環境、エネルギーに配慮した持続可能な都心としての新たな概念に基づく土地利用、交通に加え、歴史・文化とのつながりを維持することを重視した水辺開発であり、開発に際し、市民はじめ関係者に対するコミュニケーションを重要な柱と捉えています。
 本研究では、駐車場整備の実態とその考え方を整理するとともに、道路及び駐車スペースを減少させて公共空間を拡大させ、徒歩と自転車利用、公共交通とのアクセス向上を図るという考え方とそれに対する市民、事業者、行政からの評価を明らかにし、我が国における今後の駐車場整備における知見をとりまとめます。
 2019年IBSフェローシップ発表会では、ハーフェンシティの概況に加えて、研究方針と計画について発表されました。

※ 都市計画CPDプログラム認定
  土木学会継続教育(CPD)プログラム認定

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