IBS計量計画研究所

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2014年度(第19回)フェローシップ:2014~2016年

第1課題
英国におけるアクティブトラフィックマネジメント
塩見 康博 (立命館大学 理工学部環境システム工学科)
概要:
 道路交通の適切な運用を達成するための道路交通マネジメントとして、交通現況に応じて、リアルタイムおよび予測情報に基づく交通運用戦略を組み合わせ、交通需要をマネジメントする動的交通需要管理(Active Travel Demand Management)と提供可能な交通容量を能動的にマネジメントする動的交通管理(Active Traffic Management)の2つの方法がある。前者の動的交通需要管理(Active Travel Demand Management)は、課金(Pricing)、旅行者への情報提供(Traveler Information)などであり、後者の動的交通管理(Active Traffic Management)は、ランプメタリング(Ramp Metering)、可変式速度規制(Variable Speed Limits)、路肩運用(Shoulder Use)などである。
 特に、動的交通管理(Active Traffic Management)については、英国を始めとし、ドイツ、オランダ、米国において、交通渋滞の緩和、事故の削減が各地で報告され、英国全土への拡大、米国の様々な地域への導入が始まるなど、よりスマートな交通管理(Smarter Traffic Management)が実施されている。なかでも英国においては、英国道路庁(Highway Agency)が、渋滞緩和、安全性向上のため、M42をはじめとするActive Traffic Managementのパイロット事業が進められてきた。
 我が国においても、既存の道路ストックを有効活用するという視点から、高速道路を中心に様々な対策が試みられているものの、東名、中央、関越、東北道など、大都市圏近郊での交通集中による渋滞発生等、目に見える渋滞の解消や事故削減までには至っていない。
 そこで、本テーマでは、英国で取り組まれているトラフィックマネジメントに着目し、理論的な背景、法制度上の課題を克服した知見、導入効果及び導入意義、ドライバーの反応などを調査し、我が国への示唆をとりまとめることとする。
第2課題
2012ロンドン・オリンピック、パラリンピック大会の競技場、選手村(等)の跡地活用のあり方
村木 美貴 (千葉大学大学院 工学研究科)
概要:
 現代の五輪競技大会は参加選手、その関係者、世界各国からの観戦者など、人数・費用にわたって巨大なものであるために、単に国威発揚、国民経済の高揚、観光振興といったことにとどまらず、開催地・都市の地域開発、まちづくりに後々にわたって大きな影響がある。近年のそれはあまりに巨大化しており、環境保全意識のたかまりも背景にして、大会の誘致・開催計画運営にとどまらず大会開催後の経済効果の確保や地域づくりの継続性確保のために、競技施設、選手村、インフラなどの施設の恒久的利用、規模縮小、他用途への転用、仮設施設の跡地利用といった側面にも関心が寄せられている。
 2012年にロンドンで開催された夏季五輪大会もそうした対象であるが、2012年8月に英国政府はLondon 2012 Olympic Legacyを組織し大会の長期的便益と結果について把握し、2013年7月に英国政府とロンドン市が共同で報告書を取りまとめている。現在、エリザベス女王五輪公園の整備、維持にはLondon Legacy Development Corporationが当たっている。なお、五輪会場を含む6つのバラ(行政区画)はそれぞれ整備計画を策定している。
 ロンドン五輪の長期的便益・効果は、経済活性化(観光振興含む)、スポーツ振興、ボランティア等社会参画、東ロンドン地域を中心とした都市再生にわたってエビデンスとして取り上げられてきているが、跡地の活用計画(関連インフラを含む)は都市・地域計画としては不明な点が多い。たとえば、

 ・現時点で、跡地の活用はどのように進行しているか
 ・それらは大会前にどのように計画されていたか
 ・既存の地域計画、計画制度のなかで跡地活用はどのように扱われていたか

など、主として都市再生の分野での詳細は整理、報告されてはいない。
 2020年に東京では2回目の夏季五輪大会が計画されている。1964年開催時の会場・インフラは今回も一部活用されるが、会場やインフラは全体的には大きく異なり新たに大会施設の整備が考えられている。大会施設や会場の整備を後世にわたって東京の都市再生に生かしていくには、ロンドン五輪の跡地活用の現在を調査することが意義あることと考えられる。
 そこで、本テーマでは、ロンドンの事例調査により2020年東京開催のための有益な情報としてとりまとめ、五輪開催が東京の長期的な都市再生に有意義であることを示すものとする。上述のように長期的な便益は多側面にわたるので、このテーマでは、東ロンドン地域の再生との関連を考慮しつつ、五輪公園を中心とした大会会場跡地の活用について都市・地域計画(Spatial Planning)の立場から必要事項を調査することとする。

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