IBS計量計画研究所

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第14回 モビリティ・マネジメント(MM)技術講習会

概要

日 時 2022年6月30日(木)・7月1日(金)
場 所 コモレ四谷タワーコンファレンス「Room F」(控室:Room A・B)
〒162-0844 東京都新宿区市谷本村町4-1
主 催 一般財団法人 計量計画研究所
後 援 公益社団法人土木学会、一般社団法人日本モビリティ・マネジメント会議
協 力 国土交通省
  • MM技術講習会の様子

プログラム

1日目

モビリティ・マネジメント概論

講 師萩原 剛(計量計画研究所)

モビリティ・マネジメント(以下MM)の概論として、「背景」、「手法」、「事例・進め方」のポイントについて説明いたしました。「背景」では、人々は必ずしも合理的な選択をしないこと、自動車利用には様々なメリットとデメリットがあることを説明いたしました。「手法」ではMM関連グッズの概要などを説明いたしました。「事例・進め方」では、グッドデザイン賞を受賞した小山市コミュニティバス利用促進策の事例やその反省点を紹介いたしました。

基礎技術① 計画策定に関わる基礎技術

講 師羽佐田 紘之(計量計画研究所)

MMは長期的な取り組みとなるため、関係者間で共通意識を醸成するための実施計画が重要であることを説明いたしました。具体的な策定手順として、目標(ゴール)やコンセプトを決めた上で、データに基づき対象地やペルソナ(具体的な利用者像/非利用者像)を整理し、具体的なコミュニケーション手法やスケジュールを決定していくというステップを、春日井市の事例に沿って紹介いたしました。

基礎技術② ツール作成と行動変容に関する基礎理論

講 師西鶴 誠希(計量計画研究所)

MMに用いられるツールは、「挨拶状」「動機づけ情報」「公共交通情報」「行動プラン票」などがあり、それぞれのツールの役割と、行動変容との関係性について紹介いたしました。また、必要な時に必要な情報を入手しやすくするためには、ツールのパッケージ化が重要であることを説明いたしました。

基礎技術③ MMの評価

講 師井村 祥太朗(計量計画研究所)

MMを実施した場合(施策群:with)としなかった場合(制御群:without)の差異を施策効果とする効果計測の基本的な考え方について、制御群を設定する方法や施策目標に応じた指標を選定する例を説明いたしました。また、計測対象は地域全体の変化と個人の行動や意識の変化であること、施策の目標に応じた評価指標の設定が重要であることを説明いたしました。

行政主体によるMM事例紹介①アクティブシニアを対象とした荒尾市モビリティ・マネジメント

講 師坂口 拓也 様(荒尾市)

外出意欲が高いアクティブシニアに注目し、対面によるコミュニケーションを含めたTFP(トラベル・フィードバック・プログラム)の実施事例をご紹介いただきました。参加者一人ひとりに寄り添うために必要なひと手間とその効率化、地元のコミュニティとの協力関係の構築や財政部局との調整の秘訣をご説明いただきました。

行政主体によるMM事例紹介②神戸市交通局の取組事例紹介<「シームレス化」「新たな移動スタイルの提案」を軸とした、都市におけるバスサービスへの新たな可能性への調整>

講 師児玉 健 様(神戸市交通局)

複数のバス事業者が乗り入れる神戸市都心において、市バスと神姫バスとの定期券を共通化し、実質的な増便や利用範囲の拡大など利用者のメリットを大きく増加させた事例をご紹介いただきました。また、三宮を通過して転回地まで運行するバス路線を活用して、ICカード利用者の三宮周辺部の運賃を110円へ値下げし、事前と比べて利用者数が大きく増加した事例をご紹介いただきました。

行政主体によるMM事例紹介③湯沢版Maas「yuûmo」の挑戦~路線バス・送迎バス・タクシーの活用と持続させる仕組みづくり~

講 師平賀 大裕 様(湯沢町)

湯沢モビリティバスyuûmoをはじめ、昨夏実証実験が行われた湯沢版MaaSについてご紹介いただきました。湯沢町観光まちづくり機構や湯沢町、新潟県から構成されるMaaS協議会とバス事業者、宿泊施設との役割分担の仕組みに加えて、持続可能な交通まちづくりの体制をつくるための工夫についてもご紹介いただきました。

実務におけるMMの推進について

講 師藤井 聡 教授(京都大学)

変動する社会情勢の中で長く交通計画に関わってきた経験と実感から、現代の交通行政を取り巻く環境におけるMMの意義についてご説明いただきました。現代ではインフラ整備や制度設計の効果が限定的であることから、コミュニケーションを基盤とした一種の経営学であるMMの考え方が、社会をよりよくする一策となり得ることをご説明いただきました。さらに、大きなゴールを持って日々それに向かって少しずつ必死で積み上げる(manageする)ことの大切さを説かれました。

2日目

MMに係るワークショップ

講 師松村 暢彦 教授(愛媛大学)・計量計画研究所

松村教授がMM教育の現場で使用しているフードマイレージ※の教材を用いて、ワークショップを行いました。時代(1970年・2013年)、居住地(大阪・愛媛)、季節(春・冬)で8グループに分けた参加者の方々に、金額などの制約のもと食材から選び、夕食の献立の絵を描いていただきました。この教材は、フードマイレージ及び地産地消への理解を深めるだけでなく、買い物といった普段の行動が環境や交通など社会全体に関わると気づくきっかけとなることを狙いとしています。

※フードマイレージは、「食品の生産地から消費地までの距離」×「食品の重さ」で算出される指標です。フードマイレージに交通輸送手段別のCO₂排出係数を掛け合わせることで、輸送の際に排出されたCO₂量の試算ができます。

後半は、受講者の皆様にMMを実施する際の「課題」や「お困りの点」を挙げていただき、松村教授からご経験に基づくアドバイスをいただきました。

学校教育MMに関わる基礎技術

講 師松村 暢彦 教授(愛媛大学)

ご自身の生活やこれまで成功・失敗した経験を題材にして、質の高い公共空間をつくり、暮らしや社会をより良くするためにMMが貢献できることについてご説明いただきました。MM実施の可能性が高い教育現場において、行政や交通事業者と協力しながら継続的にMMを行ってきた川西市大和地区の事例についてご紹介いただきました。

民間・地域・行政が連携したMM事例紹介運賃弾力性に着目した「休日限定!往復乗車券」販売による利用促進に向けた取り組み

講 師西園 知哉 様(産交バス株式会社)

一般的に運賃弾力性の高いとされる「学生」&「非日常目的」&「休日」の交通に着目した、利用促進の取組とその効果についてご紹介いただきました。学生へのバス利用意向調査の結果を踏まえて1,000円の往復バスチケットを販売した事例では、学生の外出意欲が向上したこと、今後の横展開などが期待されることをご説明いただきました。

MM実施に関わる制度

講 師中野 光太郎 様(国土交通省総合政策局)

地域公共政策をめぐる現状、及び2020年に改正された地域公共交通活性化再生法の改正ポイントについてご説明いただきました。また、新型コロナウイルス感染症による公共交通への影響に対し、サステナブルな地域公共交通の実現のための支援、観光インバウンドの回復に備えた基盤構築のための支援のほか、エコ通勤に関する取組についてご紹介いただきました。

※ 都市計画CPDプログラム認定
  土木学会継続教育(CPD)プログラム認定

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