IBS計量計画研究所

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第16回 モビリティ・マネジメント(MM)技術講習会

概要

日 時 2024年10月10日(木)・10月11日(金)
場 所 ビジョンセンター市ヶ谷「3F 305」
〒102-0074 東京都千代田区九段南4-8-21 山脇ビル3F
主 催 一般財団法人計量計画研究所
後 援 公益社団法人土木学会、一般社団法人日本モビリティ・マネジメント会議
協 力 国土交通省
  • MM技術講習会の様子

プログラム

1日目

モビリティ・マネジメント概論

講 師萩原 剛(計量計画研究所)

はじめに、モビリティ・マネジメント(MM)とは「過度」なクルマ依存社会から「適度」なクルマ利用社会を目指し、長期的な意識変容を促すことを念頭に、コミュニケーションを通して働きかけを行うものであることを説明いたしました。そのうえで、MMは対象者別に居住者・職場・学校教育の3つの種類に大別され、それぞれに対してさまざまな働きかけ手法があることや、MMのブランド戦略についてお示しいたしました。最後に、栃木県小山市の事例を取り上げながら、MMをいかにして進めていくのかについて紹介いたしました。

基礎技術① 計画策定に関する基礎技術

講 師小松﨑 諒子 (計量計画研究所)

MMを通して行動変容を促すには継続的に根気強く施策を続けていく必要があり、目標達成までの道筋を明確化するために計画を作成することが重要であることを説明いたしました。そのうえで、施策目標および対象者の設定の仕方や、効果検証のための指標設定など、6つのポイントに沿って計画策定におけるテクニックを紹介いたしました。また、これらのポイントを盛り込んだロードマップ(実施計画)を策定するとより効果的であるとお伝えいたしました。

基礎技術② ツール作成のポイント

講 師水野 杏菜 (計量計画研究所)

計画に沿ってMMを実施するにあたって、そもそもコミュニケーションを通した行動変容がどのような心理プロセスを経て生じているのかを説明いたしました。そのうえで、あいさつ状や動機付け情報、公共交通情報などのツールを実際の事例を交えながらお伝えし、それぞれのツールがどのような行動変容を期待してどのような情報を伝えているかについて具体的に紹介いたしました。

基礎技術③ MMの評価

講 師井村 祥太朗(計量計画研究所)

MM実施の効果計測は、施策を実施した場合(with)と実施しなかった場合(without)の比較によって行うという基本的な方法論を導入し、その比較対象の設定方法として「事前」対「事後」、「事後」対「統制群」、「事後」対「推定without」の3種類を紹介し、実際の事例を用いて具体的な比較方法を説明しました。また、MMの施策目標に応じた地域全体・個人単位の指標設定の仕方の例を挙げ、その指標を計測するための調査手法について説明しました。

行政主体によるMM事例紹介①いねタク:再エネで走る住民の新しい移動手段

講 師千賀 和孝 様 (伊根町)

「伊根の舟屋」の景観等で知られる京都府下有数の漁業の町・伊根町におけるデマンド交通「いねタク」について、導入までの経緯、実証実験運行の方法と結果、本格運行の方法、運行実績をご紹介いただきました。取組による効果として利用者が順調に増えていることが示された他、役場庁舎横に新設した太陽光発電・蓄電設備から給電する電気自動車を使用し、交通GXの取組推進に寄与していることなどについてもご説明いただきました。

行政主体によるMM事例紹介②ICT教材を活用した小学生向けの交通環境学習

講 師中島 幸 様 (浦添市)

浦添市で小学生向けのMM教育として新たに導入された、ICT活用型の座学用教材と交通すごろくについて、ツール内容や効果をご紹介いただきました。特に交通すごろくについては、タブレットを使用したゲームの流れを各場面の画面と併せて詳しくご説明いただいた他、本取組に携わったご担当者として、「教育委員会との連携」、「現場の先生方の主体性の醸成」といった実現のポイントについてもご共有いただきました。

行政主体によるMM事例紹介③特定地域での住民主体自動運転サービスの実装と市全域でのMMプロジェクトの実践

講 師津田 哲宏 様(春日井市)

「特定地域での住民主体自動運転サービスの実装」については、同市内に位置し、日本三大ニュータウン(NT)として知られる高蔵寺NTでの、自動運転ラストマイル送迎サービスの導入経緯、実装内容、利用実態をご紹介いただきました。特に、町内会等を通して 加入すると年会費が割安にする、というように地域全体でサービスを支える仕組みを目指していることをご説明いただきました。「市全域でのMMプロジェクトの実践」については、公共交通の情報誌とMaaSウェブアプリの取組をご紹介いただきました。

実務におけるMMの推進について

講 師藤井 聡 教授(京都大学大学院)

「歩いて暮らせるまちづくり」を実現するMMのあり方についてお話しいただきました。幹線道路では輸送効率を優先しがちですが、地区内の移動を計画する際には、より豊かな暮らしを実感できるように、人の気持ちに寄り添ったアイディアを大切にするべきだとお話しくださいました。また、そうした計画を実現する背景として、草の根教育や地域の伝統・文化理解が重要であるということを地方都市の事例に基づいてご説明いただきました。

2日目

MMに係るワークショップ

講 師松村 暢彦 教授(愛媛大学)・計量計画研究所

松村教授がMM教育の現場で実際に使用しているフードマイレージ※の教材を用いて、ワークショップを行いました。時代(1970年代・2000年代)、居住地(大阪・愛媛)でグループ分けした参加者の方々に、金額などの制約のもと食材を選び、夕食の絵を描いていただきました。この教材は、フードマイレージ及び地産地消への理解を深めるだけでなく、どんな手段で買い物に行くか、何を買うかといった普段の行動が環境や交通の面で社会へ影響を与えていると気づかせることを狙いとしています。
※フードマイレージは、「食品が運ばれてきた距離」×「食品の重さ」で算出される指標です。フードマイレージに交通輸送手段別のCO₂排出係数を掛け合わせることで、輸送の際に排出されたCO₂の試算ができます。
後半は、グループ毎に具体的な地域・状況等を設定し、その地域でMMを実施する場合の悩みについて質疑を行い、松村教授や講師の皆様からアドバイスをいただきました。

後半質疑の詳細はこちらをご覧ください

学校教育MMに関わる基礎技術

講 師松村 暢彦 教授(愛媛大学)

MMの取り組みを通してさまざまな方と関わってこられたご経験をもとに、MMを行うことの楽しさや、豊かな暮らしを実現するためのまちとのかかわり方としてたくさんの方とコミュニケーションをとることの重要性についてお話しいただきました。そのうえで、MMと社会科教育の間には強い親和性があり、社会科の各単元とMMをいかに組み合わせられるかについてご教示いただきました。最後に兵庫県川西市での事例を通して、住民・交通事業者・行政の協働が重要であること、また、MMに関する授業を受けた子どもたちの感想についてご紹介いただきました。

民間・地域・行政が連携したMM事例紹介近江鉄道線全線無料デイと沿線地域によるイベントとの連携プロジェクトの実施と効果検証

講 師和田 武志 様 (近江鉄道株式会社)

公共交通の利用喚起のためには「にぎわい創出」と「地域共生」が重要であることをご説明いただきました。例えば、2023年から実施している「ガチャフェス」では沿線地域のイベント(21駅、49ヶ所)と運賃割引を組合せ、目標数の約2万人のイベント参加者数となったことをご紹介いただきました。また、近江鉄道の改善アイディアを沿線地域の住民と近江鉄道の社員が一緒に考え、実現していく「近江鉄道みらいファクトリー」の取組をご紹介いただきました。

MM実施に関わる制度

講 師善福 章 様(国土交通省総合政策局)

地域公共交通を取り巻く厳しい現状に対して、国土交通省は地域や社会における共創による地域公共交通の「リ・デザイン」を図っており、支援策として交通DX・GXや先進車両の導入に対する補助制度があることをご説明いただきました。また、国が進めるMM施策として「エコ通勤」の推進やMM教育に関する学校支援制度についてご紹介いただきました。

※ 都市計画CPDプログラム認定
  土木学会継続教育(CPD)プログラム認定

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