IBS計量計画研究所

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2019年IBS研究発表会

概要

日 時 2019年7月22日(月) 10:00~12:30
会 場 アルカディア市ヶ谷「富士(西)」
  • 会場の様子

プログラム

プログラム内容

挨拶 (岸井隆幸 代表理事)

IBSの調査研究活動について

発表者毛利 雄一(業務執行理事、研究本部長兼企画室長)

 IBSは、1964年の東京オリンピック開催年の創設から55年を迎え、これまでコンピュータ技術を活用した科学的アプローチ、計量的手法を中心に、都市・地域、社会基盤、経済・産業、生活・言語・価値意識等の諸分野について、政府・企業等の政策意思決定、計画策定に関する調査研究を行ってきました。
 本発表では、現在、IBSが都市地域・環境部門と交通・社会経済部門という2つの部門体制によって取り組んでいる調査研究活動の内容を紹介するとともに、これから目指していく調査研究について報告しました。

イベント来場者の「流れ」を変えるしくみ

~ビッグデータを活用した混雑予測と混雑回避のためのリアルタイムな情報提供の実証~

発表者萩原 剛(交通・社会経済部門 研究員)

 2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会のような「大規模イベント」の開催時には、集客に伴う交通混雑が生じることがあります。大規模イベント時における交通のマネジメントは、イベント運営者や交通行政を担う関係団体、交通事業者等にとって大きな課題のひとつです。
 本発表では、ビッグデータの1つである経路検索サイトにおける検索履歴データを活用した混雑予測・情報提供手法を提案し、2018年に東京都内で実施された2つの大規模イベント(花火大会)において実証実験を行った結果を報告しました。

自動運転社会に向けたインフラ整備

~現状の課題と検討の方向性~

発表者若井 亮太(都市地域・環境部門 グループマネジャー)

 近年、交通事故、高齢化、労働者不足などの課題解消を目的として、自動運転技術の導入に向けた様々な取り組みが行われています。内閣府のSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)では、その一環として、高齢者や交通制約者にも利用しやすい次世代交通システム(ART)の技術要素の1つである正着制御技術の研究開発が行われています。
 本発表では、誘導線方式の正着制御技術の社会実装に向けて実施された実証実験として、正着技術導入のインフラ要件や正着技術の利用者ニーズについて紹介しました。また、自動運転社会に向けた正着制御技術の活用の考え方に関する考察や今後の課題について報告しました。

英国の事業評価手法について

~ワイダーエコノミックインパクトを中心に~

発表者樋野 誠一(交通・社会経済部門 グループマネジャー)

 我が国における道路投資の評価は、時間短縮・経費節減・事故減少の3便益であるのに対し、イギリスでは間接便益(ワイダーインパクト)を含めた多様な効果で事業評価が行われています。本発表では、イギリスの事業評価の枠組みを示す交通分析ガイダンスについて、ヒアリングを踏まえた調査結果を報告しました。
 イギリスの事業評価は、公共支出の価値の最大化を目的に、信頼度に応じて多様な評価項目を使い分けて総合的に評価しています。経済理論から導かれるワイダーインパクトは、事業評価に機械的に適用したことへの反省から、効果の物語が記述できる事業にのみ適用するなどの柔軟な改定を行っており、これらの取り組みは我が国に参考となるものと考えられます。

クルマ依存型の地方都市における鉄道の存続を目指して

~自治体・鉄道事業者・市民のアクションプログラムの提案~

発表者秋元 伸裕(都市地域・環境部門 担当部門長 兼 グループマネジャー)

 群馬県では、平成27~28年度に実施したパーソントリップ調査に基づき、「自動車以外の移動手段も選択できる社会」の実現を目指した「群馬県交通まちづくり戦略」を平成30年3月に策定し、鉄道路線を基幹公共交通軸として位置づけ将来にわたって維持するため、今後3年間で各路線別の「利用促進アクションプログラム」を策定しています。
 本発表では、パーソントリップ調査に基づく総合都市交通計画を、実際にハード整備を開始する「鉄道路線緊急対策」として動かした点が大きな特徴であることを指摘し、整備と連動していかに沿線市町村・鉄道事業者・県民が実際にアクションを起こすかが、最重要の課題であることを提示しました。

新たな歩行回遊を支える道路空間創出の検討手法に関する一考察

~仙台市における都心交通まちづくりでの検討を対象に~

発表者福本 大輔(都市地域・環境部門 グループマネジャー)

 仙台市の都心地区では、歩行者の回遊行動が少なく、自動車交通が減少傾向にあるため、道路空間の整備・活用の方向性について見直すことが検討されています。検討においては、道路の機能と役割について、複数の定量的・定性的指標を用いて分類し、道路空間の総合的な評価および分析がなされました。
 検討結果に基づく各道路の今後の整備の方向性は、今後の都心全体の交通まちづくりの方向性(ビジョン)と基本的な施策方針(戦略)を支えるものとしての整合性を確認しながら、結論づけるようにしました。今後、他都市でも同様の手法を適用できるよう、分析手法の汎用性向上を目指すことを報告しました。

スマートフォン位置情報から読み解く観光地における人の流動

~ビッグデータはどこまで人の行動を追えるのか~

発表者廣瀬 健(交通・社会経済部門 研究員)

 観光地での来訪者の流動を詳細に把握することは、従来の聞き取り調査では比較的困難でした。そのような中、世界中で人々のアクティビティを分析する新たな手段として、スマートフォンの位置情報データを活用した分析技術の検証が盛んに行われています。
 本発表では、鎌倉地域を対象に、位置情報データを活用した来訪者の流動分析結果について報告しました。例として、利用交通手段の分析結果や、密集度が時間とともに変遷する様子を紹介しました。検証結果を踏まえ、通信技術の発展による位置情報データ活用の将来展望として、大規模なイベントなどでの人流把握やターゲットを絞った施策展開への活用可能性を提起しました。

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