2022年 IBS研究発表会は、昨年に引き続き、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大防止のため、来場者数の削減や会場内の感染対策とあわせて、リアルタイムでの配信を併行して開催いたしました。
ご発表頂きました皆様方、ならびにお忙しい中会場および配信にてご参加頂きました皆様方に、厚く御礼申し上げます。
日 時 | 2022年7月12日(火) 10:00~12:00 |
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会 場 | 御茶ノ水ソラシティカンファレンス「Hall WEST」 |
~シミュレーション技術とビッグデータを組み合わせた新たな調査の検討~
発表者石井 良治(データサイエンス室 ITマネジャー)
これまで、人の移動実態を捉えるためにパーソントリップ調査が各地で実施され、それに基づいて総合的な交通計画やまちづくりの検討がされてきましたが、近年、パーソントリップ調査の実施が少なくなってきました。それに対応し、民間等が取得するビッグデータやシミュレーション技術を活用した調査手法の効率化が期待されています。また、リモートワーク等により、人の移動と活動には乖離が生じており、今の時代に対応した調査手法の改善も必要となっています。
本発表では、まちづくりにおける人の活動や移動に関するデータ活用を巡る状況を概観した上で、新たな調査手法とそのデータを活用しやすい仕組みづくりを提案しました。特に調査に関しては、パーソントリップ調査をベースとしつつ、ビッグデータやシミュレーション技術を活用した新たな手法の提案も行いました。
~ウォーカブル空間の創出で考えるべき3つの視点~
発表者桝山 和哉(都市地域・環境部門 研究員)
国の法律・予算・税制面からの政策支援も追い風となり、ウォーカブル空間の創出に向けた取り組みは全国的に進められている状況にあります。しかし、この取り組みは一部に先行事例はあるものの、取り組みの検討手順や手法はまだ一般化されているとは言えません。
本発表では、歩行者を中心とした道路空間の活用におけるマニュアル作りを通じて得られたウォーカブル空間の創出における検討の視点やポイントを紹介しました。ウォーカブル空間の創出には、その空間におけるアクティビティやエリアマネジメント等の検討だけでなく、総合的な地区交通のあり方の検討が重要であることを示しました。
~インフラ整備とグリーンスローモビリティ活用を中心とした官民連携の取組~
発表者溝口 秀勝(都市地域・環境部門 グループマネジャー)
観光需要は繁閑の差が大きく、ハード整備とソフト対策をどう組み合わせるのかは、関係者が頭を悩ませられています。
本発表では、観光入込客数をコロナ禍直前の約1.5倍に引き上げることを目標とする宇都宮市大谷地域での取組を報告しました。地形・地質的な面から開発余地が限られる中で、質的なサービスを維持しながら持続的に発展させていく考え方を採用しています。
地域の中心部をめざして集中するマイカーでの来訪者を空間的、時間的に分散しつつ、インフラ整備やグリーンスローモビリティ等の活用することによって、マイカーによる混雑の抑制と観光体験の質の向上を両立させる方法を試行錯誤しています。
~ビッグデータと統計調査~
発表者岡 英紀(データサイエンス室 室長代理)
道路が果たす多様な役割が再考されつつあり、従来の自動車のみに着目した5年に1度の道路交通調査(道路交通センサス)だけでは、施策検討に必要なデータを十分に取得することが難しい時代になってきています。
本発表では、社会情勢、政策課題、将来像に合わせ、これまでの道路交通調査をリデザインしていくことが必要という立場から、次世代の道路交通調査に向けて調査体系検討の論点・方向性を報告するとともに、従来の統計調査としての新たな方向性として、ビッグデータを用いたODデータ作成の試行結果について報告しました。
~今後の施策展開に向けたレガシー~
発表者矢部 努(交通・社会経済部門 担当部門長)
2021年7月~9月に、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会が開催され、首都圏における円滑な大会関係者輸送と物流を含めた都市活動の安定との両立を図ることを目的として、関係機関の協力の下、各種の交通マネジメントが実施されました。
本発表では、この交通マネジメントの柱として実施されたTDM、TSM及び ロードプライシングの効果について、大会関係者輸送の根幹を成す首都高や幹線道路を対象とした多様な視点からの分析結果を、交通関連ビッグデータを組み合わせて示すとともに、都市部における今後の施策展開に向けた知見を報告しました。