全体討議概要 「MMに係るワークショップ」の後半では、受講者の皆様がMMを実施する際の「課題」や「悩み」・「お困りの点」を挙げていただき、それらについて講師を含めた参加者全員で議論することにより、今後MMを進めていくための知見を共有しました。 学校教育MMを実施するときの悩み 学校教育MMを実施する際の学校や、市町村の巻き込み方について知りたい トップダウンのアプローチの例として、京都市のようにMMを市の中心的な施策に絡め、教育部署とつながりが強い学識者を委員長に据えて、MMに造詣の深いメンバーでフォローしていく体制を作るようなやり方もある。 ボトムアップのアプローチの例として、市の担当者が子供の通う学校に直接MMを売り込むというやり方もある。 保護者からの評判はいいが、実際の公共交通の利用までつながらない 学校教育としてのMMだけでは、すぐには公共交通の利用につながらないのは事実である。MM教育だけでなく、小学生を対象としたバスの土日無料キャンペーンなどで、実際に公共交通を利用してらうことも、利用促進のためには重要である。 大和地区のように、MM教育を受けた生徒の保護者が、自治会でバス需要を取り戻すための運動を行った事例もある。 学校教育MMは、様々な思惑のある通勤MMなどと比較して即時性はないが、意図が純粋で伝わりやすいため、持続性がある。 モデル校以外の横展開を促すための取組事例を知りたい 小学校の先生を対象に研修会を実施し、興味を持ってもらえれば教材などを紹介する。 MM教育に興味・関心を持ってもらえれば、転勤先の学校でもMM教育を実施してもらえる可能性がある。 小学生よりも直接的に効果のありそうな中学生、高校生へのMM教育の実施事例が少ないため、何を行うべきか分からない 中学校や高校では現行の授業に手一杯で、MM教育の実施が難しいのが実情である。 今後、必修授業として「公共」の授業が導入される予定であり、ここにMM教育を実施する大きな可能性があると考えられる。 授業などで地域創生のテーマを取り扱うのは近年の大きな流れなので、その中で地域交通を扱うテーマは受け入れられやすいのではないか。 学校の授業行程が概ね決まってしまっていることにより、学校から出張講義を申し込んでもらえない 学校関係者とのネットワークを張っておくことが重要である。 市役所のHPなどで、出張講義を申し込めるような体制になっているのかを確認する。 大学生へのMMを実施する際のアピールポイント MMに理解のある先生を見つけ、サークル活動として実施する。 サークル活動を支援する補助金もあるので、それらを財源としながら、行政と手を組んで活動するパターンもある。 地方(公共交通が不便な地域)での悩み MMの実施を検討するにしても、公共交通が十分に運行しておらず、自家用車の代替として選択させにくい。教師や教育委員会をどのように巻き込んでいくのか。 公共交通が1時間に1本でも運行している場合は、その1本を有効活用できるようにする。 「自分の行動に運行時間を合わせるのではなく、運行時間に自分の行動を合わせるようにする」という感覚を持ってもらえるようにMMを実施する。 通勤・通院など、時間を合わせることが難しいものについては、行政が民間事業者に介入して、公共交通のダイヤの調整等を行う。 行政計画を策定し、住民の声を吸い上げ、民間に繋いでいくというのも1つの方法である。 クルマ中心の社会であるため、商業者の中には顧客の多くはクルマで来訪しているという認識が強い方がいる。そのため、駐車場の整備が不可欠という意見がある。 商店街などの商圏は数百mが一般的であり、実際に商品を購入している方がクルマで来店しているのかを一度調査することが大切である。 効果の出し方、示し方に関する悩み MM効果の把握方法が分からない MM効果を把握するにはアンケートを行うのが基本で、MM実施の事前と事後で公共交通の利用に対する意識などの比較を行う。 事前事後比較でもよいが、可能であれば統制群を用意して施策群と統制群の比較を行うとよりよいる。 ICカードや、事業者のデータは信頼性が高いので、それらを用いて比較を行うという戦略もある。 効果の示し方が分からない。財政当局への示し方が分からない。 データで示すことが難しい場合は、他の自治体の取組等の成功事例もあるので、それらを説明に用いても良いのではないか。 MM実施の効果が出たのか、限界なのか分からない 公共交通利用に転換させるだけでなく、道路の使い方を変えていくという考え方もある。 最近では、自動車の性能が向上しているので、エコドライブの推奨などもMMとして実施していけるのではないか。 路線バスの運行が少ない地域での学校教育MMの効果が不明 学校教育MMの効果を単純に乗降者数だけで議論するのは困難である。 小学校の学校教育の中で議論するほうがよく、授業を受けた小学生の感想文などから意識の変化を把握し、学校教育MMを継続的に実施するのがよいのではないか。 MMの対象が小学生であり、将来公共交通を利用することが考えられるため、現状の示し方が分からない 小学生の頃にMM教育を受けた高校生と、受けていない高校生の公共交通の利用頻度を比較した事例があるが、MM教育を受けた高校生のほうが公共交通を利用するようになっていた。 可能な限り短期間で結果を示したい場合には①突発的に測定を行う、②場所を限定して測定する、③MM実施範囲を広げて効果の範囲を広げるという方法があるかと思う。 エコ通勤(職場MM)に関する悩み 行政職員への働きかけとして、チラシによる啓発では効果が薄いと思われるため、効果的な取組を知りたい 何かが起きた時(複数の事業者が通勤バスを運営しているが赤字で困っている、新しく工業団地が出来たなど)などは、エコ通勤を働きかけやすく、効果的に取り組むことができる。 年に一度公共交通を使う日を設定し、その日の渋滞が軽減したことを定量的に示すことができれば、エコ通勤の働きかけとしても効果的である。 通勤MMで、企業にコミュニケーションアンケートを行った事例について知りたい IBSでもエコ通勤のアンケートを実施した事例がある。 既存のアンケートだけでなくツールを作成する方法もある。 (例)定期入れに入る時刻表など 地域鉄道沿線の企業を対象にしたMM実施のポイント 企業MMを依頼する際の働きかけ方や依頼方法を知りたい。コンビニやスーパーとのMM実施における連携が上手く進まない 企業MMを実施するための協議会を作る。 公共交通にこだわらず、私的交通であるが自転車などへの転換を促す。 定期利用など大口の顧客に対して実施する。 MM実施(体制等)に関する悩み 行政職員異動に対応するためのノウハウの継承 MM講習会の受講を勧めて、ノウハウを蓄積することが有効。 部内での理解が得られない。土木職とは畑違いという見方をされ、孤立している 異なる部署(福祉・健康)の動きをリサーチして、MMを仕向けるやり方もある。 特定の地域を対象とした、バス利用者の促進を行った事例について知りたい 松山では、自転車通学生にヘルメットの着用を義務化したところ、ヘアースタイルが崩れるなどの理由から、公共交通利用者が増加した。 観光が集中する場所や、中心市街地の駐車場の影響で、P&R(パーク・アンド・ライド)を利用しても渋滞に巻き込まれる できるだけ都市の中心部の外にP&Rの施設を設ける。市内からも観光地へもアクセスできるようにする。 P&Rの広報が分かりにくく、取組の意図が利用者に伝わりにくい 定量的なデータだけではなく、情緒的な情報(人々の感謝の言葉など)も併せて伝えることが有効である。 MM技術講習会の一覧へ戻る