IBS計量計画研究所

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第12回 モビリティ・マネジメント(MM)技術講習会

概要

日 時 2019年7月4日(木)・5日(金)
場 所 グランドヒル市ヶ谷  〒162-0844 東京都新宿区市谷本村町4-1
白樺西(1日目講習会)・白樺東(意見交換会)・珊瑚(2日目講習会・ワークショップ)
主 催 一般財団法人 計量計画研究所
後 援 公益社団法人土木学会、一般社団法人日本モビリティ・マネジメント会議
協 力 国土交通省
  • 写真 MM技術講習会の様子 MM技術講習会の様子

プログラム

1日目

モビリティ・マネジメント概論

講 師谷口 綾子 准教授(筑波大学)

谷口 綾子

自動車利用と公共交通利用の様々な特性についてご紹介いただいたうえで、「一人一人のモビリティ(移動)が社会にも個人にも望ましい方向へ自発的に変化することを促す、コミュニケーションを中心とした交通施策」というMMの定義や基礎的な技術体系、具体的な事例についてご説明いただきました。また、MMを進めるポイントとして、ターゲットを固めた上で施策を行うこと、イメージ戦略が重要であるということについても具体的な事例とともに、ご説明いただきました。

実務におけるMMの推進に向けて

講 師藤井 聡 教授(京都大学)

藤井 聡

実務におけるMMを行う精神として、managementという英語が持っている、“厳しいが、何とかやり遂げる”という気持ちが重要であるということをご説明いただきました。実際にMMを行っていくためには、一緒にMMを行う仲間(行政内、交通事業者等)を見つけ、小さくても実行可能な目標を立ててそれを達成することの重要性をご説明いただきました。こうしたことの積み重ねによって、多くの人を巻きこむことができ、最終的に大きな目標の達成につながることをご説明いただきました。

MMの実施に関わる基礎技術①めざす目標に合わせたMMの選び方

講 師萩原 剛(計量計画研究所)

MMの実施に関わる基礎技術の計画を立てる段階である、「めざす目標に合わせたMMの選び方」について説明いたしました。MMを実施する上で、めざす目標(ゴール)と具体的な目標(ターゲット)を明確にして、どのようなMMを実施するべきか、4つのSTEP(段階)をふまえ、検討することの重要性を説明いたしました。

MMの実施に関わる基礎技術②MM関連グッズの意義と活用のポイント

講 師水田 哲夫(計量計画研究所)

コミュニケーションツールであるMM関連グッズについて、参加者の意識・行動の変容を促す方法や、動機付け情報・フィードバック情報などのグッズ作成におけるポイントを示しながら紹介いたしました。

MMの実施に関わる基礎技術③MM実施の効果計測のポイント

講 師井村 祥太朗(計量計画研究所)

MMを実施した場合(施策群:with)と実施しなかった場合(制御群:without)の差が施策効果であり、直接計測することのできないMMを実施しなかった場合の効果把握の考え方について説明いたしました。また、計測対象は地域全体の変化と個人の変化の2種類があり、施策の目標に応じた評価指標を設定することの重要性を説明いたしました。

行政主体によるMM事例紹介①武豊町における住民と連帯したコミュニティバスの利用促進の取り組み

講 師鳥居 佑多 様(武豊町)/櫻場 敬信 様(武豊町コミュニティバス生活の足を考える会)

鳥居 佑多、櫻場 敬信

コミュニティバス「ゆめころん」のユニークな利用促進事業についてご紹介いただきました。様々な利用促進事業を実施することになった経緯や、現在の「ゆめころん」の出張訪問事業の取り組みなど、映像と一緒にご紹介いただきました。また、住民団体の取り組みに関しては住民団体「武豊町コミュニティバス生活の足を考える会」の会長の櫻場様より、住民同士のつながりを活かした取り組みについてご紹介いただきました。また、行政と住民団体とが連携することの要をご説明いただきました。

行政主体によるMM事例紹介②藤沢市における小学校を対象とした「藤沢市MM教育」の導入の取り組み

講 師加藤 雄介 様(藤沢市)

加藤 雄介

藤沢市が行っている小学校を対象としたMM教育に関してご紹介いただきました。小学生へMM教育を行うことで、将来的にかしこく公共交通を使いこなすことができる大人を育成することができ、同時に保護者を巻き込むことも期待できるとお話しされました。また、小学生がどのようにMMについて学んでいるのか、自作された交通すごろくの実物などとともに、実際の取り組み例をご紹介いただきました。

行政主体によるMM事例紹介③豊橋市における持続可能な公共交通に向けた地域主体のMMへの取り組み

講 師平田 理恵 様(豊橋市)

平田 理恵

豊橋市富士見地区における豊鉄バス(株)レイクタウン線の運行システム改善とMM施策を併用した事例を中心にご紹介いただきました。当該地区においては、スーパー等で自治会と運行事業者が協力して行ったバス利用の呼びかけや小学校・老人会に対する出前講座などの取り組みを行い、バス利用者が回復したことをご説明いただきました。
また、レイクタウン線での取り組みを踏まえ、公共交通を維持・改善していくためには、地域主体で継続的に利用促進に取り組むことが必要であり、行政は地域のキーパーソンとの連携や後継者の育成をいかにして行うかがポイントであるということをご講演いただきました。

2日目

MMに係るワークショップ

講 師松村 暢彦 教授(愛媛大学)・計量計画研究所

MMに係るワークショップの様子

ワークショップでは、松村教授が実際にMM教育の現場で使用しているフードマイレージ※の教材を、参加者の皆さんに体験していただきました。参加者の皆さんには、異なる時代(1970年代・2013年)と地域(都会(大阪)・地方(愛媛))の住民になりきり、夕食の献立の食材を選んで、夕食を作って(献立の絵を描いて)いただきました。この教材は、フードマイレージ及び地産地消に対する理解を深めることに加え、買い物などの普段の何気ない行動が、環境や交通など社会全体に関わる社会的行為であることを、児童が自発的に考えながら生活するきっかけとなることを狙いとしています。松村教授には、この教材の弱点の補完方法やMM教育で大切にしている想いなども含めて、小学校でフードマイレージを実践した際のエピソードを踏まえながら説明していただきました。
※フードマイレージは「食品の生産地から消費地までの距離」×「食品の重さ」で算出される指標であり、フードマイレージに交通輸送手段別のCO₂排出係数を掛け合わせると、輸送の際に排出されたCO2の試算ができます。

後半質疑の詳細はこちらをご覧ください

学校教育MMに関わる基礎技術

講 師松村 暢彦 教授(愛媛大学)

松村 暢彦

小学校におけるMM教育について、MM教育の事例や留意点などを中心にご説明いただきました。MM教育が子どもたちだけではなく、保護者にも影響を与えた例や、MM教育を受けた小学生が高校生になったときのバス利用が増えた例など、具体的なMM教育の効果をご紹介いただきました。また、学校教育MMはすぐに効果として現れないものの、長期的な視点からは有効な取り組みであり、誠心誠意取り組むことによって、教育の現場にもMMを受け入れてもらうことができるという、MM教育に関する意義についてご説明いただきました。

民間・地域・行政が連携したMM事例紹介

講 師日髙 悟 様(西日本鉄道株式会社)

日髙 悟

福岡市長住地区でのMMの事例として、マルチモーダルモビリティサービスの「my route(マイルート)」と、AI活用型オンデマンドバスの「のるーと」について、ご紹介いただきました。
MMの実施には目指す姿を共有するパートナーを見つけ、徹底的に議論し、お互いのズレを埋めていくことが重要ということについて説明いただきました。

MM実施に関わる制度

講 師河村 英知 様(国土交通省)

河村 英知

MM実施に関わる制度に関して、国土交通省の河村様からご説明いただきました。地域公共交通の現状やMaaSに関する新しい動きをご紹介いただいたほか、公共交通利用奨励に向けた制度自体の見直し、実際にMM教育やエコ通勤などに適用される実施支援制度の内容やモデル事例ついてご説明いただきました。

※ 都市計画CPDプログラム認定
  土木学会継続教育(CPD)プログラム認定

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