日 時 | 2025年6月19日(木)・6月20日(金) |
---|---|
場 所 | ビジョンセンター市ヶ谷「3F 305」 〒102-0074 東京都千代田区九段南4-8-21 山脇ビル3F |
主 催 | 一般財団法人計量計画研究所 |
後 援 | 公益社団法人土木学会、一般社団法人日本モビリティ・マネジメント会議 |
協 力 | 国土交通省 |
講 師萩原 剛(計量計画研究所)
モビリティ・マネジメント(MM)とは、「過度」なクルマ依存型社会から「適度」なクルマ利用社会を目指し、コミュニケーションを中心とした方法により各主体の「意識」に働きかけを行うものであることを説明しました。その上で、MMの進め方、種類、関連グッズ、ブランディング戦略について知っておくべき概要をお示ししました。最後に、栃木県小山市の事例を取り上げ、MMの進め方を具体的に紹介しました。
講 師小松﨑 諒子(計量計画研究所)
MMの進め方であるPDCAサイクルのうちPに対応する技術として、計画策定におけるテクニックについて、施策目標および対象者の設定・エリア選定の方法、各主体へのコミュニケーションの取り方、スケジューリングの仕方など6つのポイントに沿って紹介しました。最後に、これらのテクニックを盛り込んだロードマップを策定するとより効果的であることを説明しました。
講 師谷口 賢太(計量計画研究所)
MMの進め方であるPDCAサイクルのうちDに対応する技術として、MMのツール作成のポイントを解説しました。まず、コミュニケーションを通した行動変容がどのような心理プロセスを経て生じているのかについて説明したうえで、あいさつ状や動機付け情報などの様々なツールを実際の作成例を交えながら紹介し、それぞれのツールがどのような効果を期待して情報を伝えているのか説明しました。
講 師水野 杏菜(計量計画研究所)
MMの進め方であるPDCAサイクルのうちCに対応する技術として、MM実施の効果計測のポイントについて説明しました。MMを実施した場合(with)と実施しなかった場合(without)の差を比較する効果計測の3つの手法を具体的な例を交えて紹介いたしました。また、評価にあたっては、何を対象に効果計測を行うかが重要であり、目的に応じた適切な評価指標を設定する必要があることを説明しました。
講 師津田 哲宏 様(春日井市)
「特定地域での自動運転送迎サービスの実装」については、同市内に位置し、日本三大ニュータウン(NT)として知られる高蔵寺NTにおける、自動運転ラストマイル送迎サービスの導入経緯や実装内容、利用実態をご紹介いただきました。本事例では、地元住民によるNPO団体が主体となって送迎サービスを提供しており、地域を巻き込んだ体制づくりを目指していることを強調されました。「市全域でのMMプロジェクトの実践」については、公共交通の情報誌やMaaSウェブアプリの他、昨年度実施された路線バス無料デーの取組に関してご紹介いただきました。
講 師能登谷 ゆかり 様(藤沢市)
藤沢市における、小学校へのMM教育実施までの経緯と直面した課題についてお話いただき、教育現場との連携の重要性をご説明いただきました。また、継続的に小学校教育にMMを組み込むための工夫として、「教育振興基本計画へのMM教育の導入」や「MM教育の実施手引書の作成」をご紹介いただきました。最後に、ご自身の体験を踏まえたMM教育の必要性についてもお話いただきました。
講 師海老名 謙 様(宇都宮市 総合政策部 交通政策課)
宇都宮市のLRT導入の経緯と新設に伴ったバス路線の再編やMM施策についてご紹介いただきました。LRTを基幹公共交通として位置づけ、郊外部には地域内交通の導入を推進することで、階層性のある公共交通ネットワークを目指していることをご説明いただきました。また、地域独自の交通系ICカードを導入し、上限運賃制度や乗り継ぎ割引制度を導入して公共交通の促進を行っていることをご説明いただきました。
講 師藤井 聡 様(京都大学大学院)
実務において、MMをどのように実践し、プロジェクトを実現させるのかについて、政治的決定の仕組みなどを踏まえながらご説明いただきました。事業の実現には、行政職員が小さなプロジェクトから熱心に取り組み、成果を積み上げていくことが必要であり、それにより首長が明確なビジョンを持ち、そのビジョンを市民に広く共有することが重要であるとお話しいただきました。また、公共交通事業におけるマーケティングの不足について触れられ、適切かつ十分なマーケティングを行うことで、コストを上回る効果が得られることをご説明いただきました。
講 師松村 暢彦 教授(愛媛大学)・計量計画研究所
ワークショップの前半は、松村教授がMM教育の現場で実際に使用しているフードマイレージの教材を用いたグループワークを行いました。フードマイレージは、「食品が運ばれてきた距離」×「食品の重さ」で算出される指標であり、フードマイレージに交通輸送手段別のCO₂排出係数を掛け合わせることで、輸送の際に排出されたCO₂の試算ができます。
このワークショップでは、グループごとに食材を選び、夕食の献立を考えるという日常の生活の中のできごとを通し、普段の行動が環境や交通の面で社会へ影響を与えていると気づかせることをねらいとしています。
ワークショップの後半では、MMを実施する中でのお悩みについてグループ内で共有したのち質疑を行い、松村教授や講師の皆様からアドバイスをいただきました。
講 師松村 暢彦 教授(愛媛大学)
ご自身の生活や研究活動のご経験をもとに、MMの社会的意義についてお話しいただきました。また、大学・自治体・住民が相互にコミュニケーションを図りながら、協力体制を築いていくことの重要性についてもご説明いただきました。 そのうえで、MM教育の実践事例として、川西市大和地区での取り組みをご紹介いただき、具体的な実施内容や教育現場におけるMMの効果について、詳細にご教授いただきました。
講 師野崎 央 様(阪神バス株式会社)
兵庫県尼崎市・西宮市を中心にバス路線を展開する阪神バスによる、路線沿線の非交通事業者との「共創」に基づくバス事業の取り組みについてご紹介いただきました。既存の路線バス路線と、自動車学校のスクールバスや病院の送迎バスが重複する区間における路線再編の事例を取り上げ、その具体的な手法や各事業者にもたらされたメリットを中心にご説明いただきました。また、これまで接点のなかった事業者同士が共同で事業を行う際の重要なポイントとして、「行政」が間に入ることが、共創の障壁を下げ、事業の円滑な推進につながることをご説明いただきました。
講 師福田 稔樹 様(国土交通省 総合政策局 交通政策課)
MM実施に関わる制度をご紹介いただきました。地域公共交通の現状について説明いただき、従来の補助制度だけでなく、事業者間の連携・共創を支援する取り組みをご紹介いただきました。また、交通DXやGXに対する積極的な支援、さらには過度に自動車に頼る状態から多様な交通手段を適度に使い分ける方向へ自発的な転換を促すエコ通勤の推進についてもご説明いただきました。
※ 都市計画CPDプログラム認定
土木学会継続教育(CPD)プログラム認定